- 【アルバム名】
- NATURAL ESSENCE (BLUE NOTE)
- 【リーダー名】
- TYRONE WASHINGTON (1967/12/29)
- 【パーソネル】
- WOODY SHAW (tp) JAMES SPAULDING (as,fl) TYRONE WASHINGTON (ts)
- KENNY BARRON (p) REGINALD WORKMAN (b) JOE CHAMBERS (ds)
- 【収 録 曲】
- NATURAL ESSENCE / YEARNING FOR LOVE / POSITIVE PATH / SOUL DANCE / ETHOS /
- SONG OF PIECE
- 【内 容】
- 「爵士楽株式会社」の忘年会・完結編。さすがにもぉ、これでヤメにします。ひ
っぱるのも3回までだよねー。で、前回はマッサージ好きのアート・ブレイキー第1技
術部長まで紹介したわけですが、今度は営業畑に目を転じてみましょう。第1営業部長
はソニー・ロリンズ氏。一見すると豪放磊落で男性的に見えるこのロリンズ氏、実は極
めて傷付きやすいナイーブな性格で、好きな漫画のキャラはオリーブ(ポパイの奥さん
)という人であります。突然会社に来なくなったりするので、どうしたのかと思ったら
「バラ十字会」に入ってたりして、今ひとつよくわからんのであります。つい最近も昼
休みにふらっと外へ出たまま戻ってこなかったので部下が慌てて捜し回ったところ、橋
の上で泣いていたところを保護されたばかりです。しかし、普段の力強いまでの営業活
動は他の追従を許さず、会社としても無くてはならない存在となっているのであります
。しかし、ある日突然アタマをモヒカンにしてきた時は社員全員ぶったまげました。
-
- 続いて第2営業部。ここは熱血漢の大男、キャノンボール・アダレイ氏が部長を
務めております。このキャノンボール氏は新入社員だったころからやる気マンマンで、
しかしこの「やる気マンマン」というのも何だかニコニコ健全爽やかなコトバだよねー
。というコトはさておいて、その自信たっぷりの態度にちょっと反感を抱いた当時の上
司オスカー・ペティフォードはこの生意気な新人の鼻をあかしてやろうと、ものすごく
難しいプロジェクトを彼に押しつけたのだそうです。ところがキャノンボールはその難
事業を難無く成功させて、一気に株をあげたと伝えられております。一部では「ファン
クの卸商人」などと陰口をたたくむきもおりますが、そのサービス精神旺盛なキャラは
営業マンとしては最適でありましょう。
-
- さて、宴もたけなわ。お酒も入ってベロベロになり、各人が次第にその本性を現
してまいります。「だいたいねぇ、チミはねぇ、地味なんだよぉ。」と、部下のジミー
・コブに対してネチネチと説教をタレているのは第2技術部の部長であるマイルス・デ
イビス氏。「そりゃあ、君の前にウチにいたフィリー・ジョー君は凄かったよぉ。」こ
のマイルス部長のところはブレイキー部長のところと並んで優秀な部下が育つことで有
名で、部下の引き抜きなども熾烈を極めてるんですが、マイルス部長はひどいイヤミを
平気で言ったりするので部下からは嫌われています。中でもひどい目にあったのが、い
まマイルスの下で課長補佐をしているハンク・モブレイ君ですな。モブレイ君はもとも
とブレイキー氏の子飼いの部下だったんですが、「今度、大きなプロジェクトをやるこ
とになってね。どうしてもチミの力が必要なんだ。課長補佐待遇ということでウチに来
てくれんかねぇ。」異例の出世だというので本人も周囲の人もよろこんで、勇躍モブレ
イ君はそのプロジェクト・チームに参加したんですけどね。ところがそのチームには、
元マイルスの部下で今では独立しているコルトレーン氏も参加しており、モブレイ君の
仕事ぶりはことごとくキレ者のコルトレーン氏と比較されるわけです。結局モブレイ君
はコルトレーン氏の引き立て役にされちゃったわけで、この宴会でもマイルス部長から
離れ、仲のよかったウイントン・ケリー君がマイルス部長の煙草に火をつけているのを
遠くからぼんやり見てるのでありました。その横では同じ釜の飯を食ったケニー・ドー
ハム君が黙々と1人で酒を飲み、コンパニオンに「こちら、お静かね。」などと言われ
ているのであります。
-
- あ、向こうのテーブルでは総務次長のマックス・ローチ氏とOLのアビー・リン
カーンが、何やら仲居さんに文句を言っておりますな。「どうしてみんなのマグロの刺
身が4切れなのに、僕たちだけ3切れなんだよぉ。こういう不公平があっていいのかぁ
?正当な権利を我々は主張するぞぉ!」その横ではチャールス・ミンガス氏と部下のダ
ニー・リッチモンド君が、なにやら石原慎太郎知事の政策について語っているようです
。「馬鹿なヤツだよ、慎太郎はよぉ。」「そうだ、そうだ!」さっきから始まったカラ
オケでは、お色気OLのジェリー・ロンドンちゃんが「クライ・ミー・ア・リバー」を
歌ってヤンヤの喝采をあびているところであります。その喧噪の中でマイルスの部下で
あるハービー・ハンコックはうつらうつらと、うたた寝ちゅう。「おい、起きろよぉ。
」同期入社のロン・カーターにつつかれたハービー、「あ、夢見てたぜ。夢枕に大日如
来が立ってよぉ・・・。」同じく、うたた寝していたローランド・カークくん。いきな
り立ち上がって「ブチョー。俺、明日からラサーンって名乗るよぉ。」その時、外では
大きな悲鳴が。「きゃー!前の川にアルバート・アイラーさんの死体がぁ!」酔っ払っ
てふらふらと外へ散歩に行き、あやまって川に転落しちゃった模様です。同じ頃、若い
OLといちゃついていたリー・モーガンのところに一人のお局OLが歩みより、「死ん
でもらいます。」ずどーん。もぉ、ワヤであります。しかしどんな時にも慌てず騒がず
、冷静沈着なオトコ、マックス・ローチ氏。マイクの前に立ち、「さ、宴も盛り上がっ
てまいりましたが、ここらへんでお開きということでー。最後は一本締めで締めたいと
思いまーす。では皆様、お手を拝借ぅ。いよー、パンっ!」
-
- こうして「爵士楽株式会社」の忘年会は幕を閉じたのでありました。
-
- @ さ、タイロン・ワシントン。「爵士楽株式会社」の例で言うと、「無礼講の
ブレイキー部長」の元から多数の部下を引き連れて独立したホレス・シルバー氏のとこ
ろに配属された新入社員と言ったところですな。ウディ・ショウ君と同期入社というこ
とになります。このタイロン・ワシントン君が初めて自分の名前でした仕事がこの『ナ
チュラル・エッセンス』ということになりますね。何はともあれ独り立ちできて、よか
ったじゃないの。同期のウディ・ショウ君も参加して、その門出を祝福しとります。あ
と、ちょっぴり先輩格(性格はちょっとヘン)のジェームス・スポルディング氏も参加
して、これから楽しい3Pが繰り広げられるわけですな。いや~ん、楽しみぃ♪はい、
では1曲目。タイトル曲の「ナチュラル・エッセンス」。このアルバムは全曲がタイロ
ン君のオリジナルとなっております。で、「完全ブルーノート・ブック」によれば、タ
イロン君というのはジョー・ヘン・ライクなプレイで一時期話題になったのだそうであ
りまして。この「ジョー・ヘン・ライク」というのは「ジョー・ヘン好き好きっ♪」と
いう意味ではなく、「ジョー・ヘンに似ている」という意味ですね。ま、好きだから真
似したくなるんでしょうが。で、確かにこの1曲目のソロなどを聴いておりますと、ず
いぶん「うねうね」しとりますなぁ。曲自体は今ひとつよくわからんのでございまして
、いかにも60年代モノですなぁ。といった感じ。タイロン本人は「自分本来の姿に戻
るひとのための泣き声なんだ」そうでありまして。で、タイロンの「泣きわめきソロ」
に続いてウディ・ショウ、ケニー・バロンと短めのソロが続き、テーマに戻ります。ま
あまあやん。と言ったところですね。
-
- 2曲目は「ヤーニング・フォー・ラブ」という曲。「愛の渇望」というか「愛欲
」というか。ここでいう「愛欲」というのは、あ~、イイっ!よくしてぇ♪ということ
ではなく、もっと哲学的な「神の愛」といった感じのものですね。なんてコルトレーン
的な。で、曲のほうはブッカー・リトルあたりが書きそうな感じですな。タイロンのソ
ロはジョー・ヘン的ですが、フリーキー・トーンを多用して、かなり「わめき風」にな
っております。続いてウディ・ショウとケニー・バロンの短めのソロ。個人的にはショ
ウ君のプレイをもっと堪能したいところなんですが、リーダーが許してくれないのぉ。
スポルディング君に至ってはソロさえとらしてもらえないのぉ。
- ま、スポルディング君のソロはちょっぴりヘンだから、なくってもイイんですけど
ね。はい、3曲目。「ポジティブ・パス」は前向きな人生を送ろうという、そういった
曲ですな。バックは駄目なのぉ♪そのようにタイロン君は申しているわけです。曲自体
もかなりアグレッジブル。私、インパルスのコルトレーンって駄目なのぉ。という人に
はまず駄目でしょう。タイロン君のソロは、ほとんどフリーですな。あ、ここではショ
ウ君のソロがけっこう聴けますね。原文ライナーにも書いてありますが、けっこうフレ
ディ・ハバードです。でもトーンが独特です。いいんだよなぁ、ショウ君。あ、ここで
はリーダーの許しが出たのか、スポ君もソロをとらせてもらっております。やっぱりち
ょっとヘンです。続いてケニー・バロンのソロ。このメンバーの中ではこの人がいちば
んオーソドックスなソロを聴かせてくれますね。シダー・ウォルトンを更に理知的にし
た感じですな。続いてレジー・ワークマンのベースソロが聴けます。後半のジョー・チ
ャンバースとのカラミがよろしいかと。ここでテーマに戻ってエンディング。かなり長
めの演奏であります。聴いてるだけで疲れますね。
-
- 4曲目「ソウル・ダンス」。ちょっぴりソウルなムードがあるような?という気
がしないでもないですが、基本的には疲れる演奏です。ソロパートはタイロン、ショウ
、スポ君の順。ソロの途中で他の2人がリフをつけるパートがございます。個人的には
やっぱりショウ君LOVE♪テーマではフルートを吹いていたスポ君はソロではアルト
に持ち替えます。フルートのほうがマシなのにぃ。はい5曲目。「エソス」ですな。ち
ょっぴりボッサ風のリズムで、スポ君のフルートがフィーチャーされております。この
アルバムの中では一番聴きやすい演奏ですかね?ラストは「ソング・オブ・ピース」。
タイロン君が声高らかに「平和」を歌い上げます。無伴奏テナーで始まり、ときどきタ
イコの音が入ったりして、そのうちベースの音がボンボンと入り、そのままフリージャ
ズ風の演奏に突入します。勘弁してくれ~。と言った感じですな。以上、全体的に極め
てハードな演奏で、一般ウケしないこと甚だしいアルバムでございました。んじゃ。
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